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大阪地方裁判所 昭和30年(カ)1号 判決

再審原告 藤本順八

再審被告 中島薫

主文

本件再審の訴を却下する。

再審の訴訟費用は再審原告の負担とする。

事実

再審原告訴訟代理人は「大阪地方裁判所が昭和二十九年九月十六日同庁昭和二九年(ワ)第二三〇七号約束手形金請求事件につき言渡した判決は之を取消す、再審被告の請求は之を棄却する、本訴及び再審訴訟費用は再審被告の負担とする」との判決を求め再審の事由として、

「一、再審被告は昭和二十九年四月再審原告及び訴外藤本ナミヱ同牧村光円同牧村サカヱを共同被告として大阪地方裁判所に訴を提起し同裁判所は昭和二九年(ワ)第二三〇七号として審理の結果同年九月十六日再審原告敗訴の判決が言渡され同判決は同年十月六日確定した。

二、而して、右事件に於て、訴外朝尾皆之助弁護士が再審原告より委任を受け訴訟代理人として、訴訟行為をなしているが、再審原告は同訴外弁護士に訴訟代理権を授権したことはない。即ち、訴外藤本ナミヱは再審原告の妻訴外牧村サカヱは右訴外人の実姉、訴外牧村光円はその夫であるが訴外牧村両名は多額の債務を負担するに至つた為訴外人等は相謀り金額八万五千円の約束手形一通を再審原告及び訴外藤本ナミヱ共同で訴外光円宛振出した如く偽造し之を訴外サカヱを経て再審被告に裏書譲渡したものであつて再審被告は右の手形に基いて前記の訴訟を提起した、然るに訴外藤本ナミヱは右の事実の発覚するのを恐れ再審原告に対する訴状並に期日呼出状等一切の送達を受けながら再審原告に秘して交付せず従つて再審原告は自己に対し訴の提起があつたことも知る由なく、訴外朝尾弁護士に対する訴訟委任は訴外藤本ナミヱ等が共謀の上偽造した訴訟委任状に基くものであつて全く再審原告不知の間に判決は確定したから本訴に及んだ」と述べた。

被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め答弁として「再審原告主張の判決が存したことは認めるがその余の事実は争う」と述べた。

理由

再審原告の主張は前訴たる大阪地方裁判所昭和二十九年(ワ)第二三〇七号約束手形金請求事件に於て被告であつた再審原告の訴訟代理人と称する弁護士朝尾皆之助に対しては訴訟代理を委任したことがないと謂うにあるが、右事件の判決は弁護士朝尾皆之助に対し送達されただけで前訴の被告であつた再審原告に対して送達されていないことは当裁判所に顕著である。故に、若し再審原告の主張する如く同弁護士に、訴訟代理権がなかつたとしたならば右事件の判決は未確定であり未確定の判決に対する再審の訴は許すことが出来ないから再審原告の請求は不適法として却下すべきものである。

仍て、民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 松浦豊久)

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